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2012年10月22日 (月)

新郎の父

土曜日は息子の結婚式だった。

新郎の父の役割は、披露宴の最後に行われる「親族代表のあいさつ」である。

いちおう短い原稿は書いておいたのだが、前日から鼻水が止まらなくなって、頭に叩き込むことができなかった。

仕方がないので、しっかり晩酌をして薬を飲んで寝たら、翌朝にはまあまあの状態にまで回復していた。


鬼嫁と末娘の三人で2時間かけて会場に向かう。

末娘は鬼嫁の振袖を、鬼嫁…いや新郎の母は紋付を着るそうだ。


ボクはモーニングの貸衣装をさっさと着たが、その時点で他にすることがなくなった。

最後のあいさつをそらんじようと外をぶらぶら歩き回ったが、まだ風邪の影響で頭がすっきりしないし、思い浮かべる口上が毎回違う。


「こりゃ~マズイなぁ…」
と、気を取り直して一から考え始めたら、ますます頭が混乱してきた。


そのうち長女一家が到着したので、一番ヒマなボクが2人の孫の面倒をみることになって、あいさつはとりあえず結婚式の最中に仕上げることにした。


ところが、付属の教会での結婚式は、あまりにも厳粛な雰囲気だったので、口パクであいさつの予行演習をするなどという不謹慎なことはできなかった。

H241020_011bjog1

新郎新婦を囲んでみんなの集合写真を撮り終えると、バージンロードを花嫁と一緒に歩いたおやじさんから、
「やれやれ…私の仕事は終わりました。あとはヤブ山さん、お願いしますよ」
と、プレッシャーをかけられた。


「まだ口上は固まっていないのに…」
と心の中でつぶやく。

ところが、この辺でtobinokoさんの
最近の新郎新婦の親は、ボケをかますのがいいみたいですよ
という悪魔のような書き込みを思い出してしまった。


でも、どう考えてもシチュエーション的には、
『花嫁が涙ながらに両親への手紙を読み上げ、そのまま嗚咽しながら花束を贈呈する』直後なので、ここでボケをかますなんて…どうやるの?とぼんやり考えていると、披露宴が始まった。


新郎新婦の親は、招待者の席をくまなく挨拶して回るのが慣習とされているので、ボクは妻をせかしながら各テーブルを回り始めた。


そうなると挨拶を考えているどころではない。

中にはすっかり出来上がって、ボクに何度も酒を勧める客もいるので、ボクもそのうちほろ酔い加減になってきた。

…でも頭の中は、色々なあいさつのパターンがグルグル回っているのだ。


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…とうとう花嫁のお礼の言葉が始まった。
○子ちゃんの涙ながらの手紙に会場中からもらい泣きの声が聞こえる。


…二人が花束を持ってきた。

ボクも神妙な顔をしてそれを受け取る。

…六人が一列に並ぶと、司会者が、突然、

「ではここで、新郎のお父様からお礼のごあいさつがございます」
と宣言した。


もうちょっと猶予の時間があるのかと勝手に思っていたが、いきなりボクに照明が当たった。

…以下、ボクの口から出たであろう?口上を思い出してみる。


新郎の父、ヤブ山○男でございます。
ここで親族代表のお礼のご挨拶をさせていただきますが、

実は先週、ある人から、

「最近の親族代表のあいさつのときには、ボケをかますのがトレンドのようですよ」

と恐ろしいサジェスチョンをいただいたので、どうしようかと考えていたのですが、


皆様のお席の上に、新郎新婦から一言メッセージの手紙があったかと思いますが、息子から母には、

「おかあさん、永い間本当にありがとう。これまでの…云々」と丁寧なお礼が書いてあったのですが、私のには、

「最後の大事な締めのあいさつがあるから、酒を飲みすぎないように!」

とだけ書いてありました。

どこまで親に頼るんだという気はしますが、親でありますので、気を取り直して……、

ヤブ山家、○○家の両家を代表して、一言お礼のことばを申しあげます。


本日は、大変お忙しい中、このように多くの皆様方に二人のお祝いに駆けつけていただき、誠にありがとうございます。

また、身に余るたくさんのお祝辞を頂戴し、幸せいっぱいの二人を目の当たりにいたしまして、親としてこの上ない喜びと感激に浸っているところでございます。


(ここまではワンパターン)


これからの人生は、この若い二人で歩んでいくこととなりますが、いかに家庭を築き、それを守り、そして親としてどういう人生を送っていくのか、という人生の大きな課題に向かって進んでいくこととなります。


(この辺りから少しアレンジを入れはじめる。次のフレーズがスムースに出るかどうかがネックだった)


おそらくその過程の中で、いかに親というものが、未熟なままで、まさに手探りの状態で子供を育てていたのか、ということに気付くだろうと思います。


(ここで次のフレーズが出てこなかったら…何を言っているのか分からなくなる)


人間は、何も努力しないままで、本当の意味での大人や親になれるはずがありません。

きっとこの二人も、自分たちで、大人になり、親になるということが、どれだけ大変なことかを身にしみて分かってくるだろうと思います。


(ここで次の二つのフレーズが出てこなかったら、全てが台無しになる)


それを乗り越えていくためには、二人の努力はもちろんでありますが、何よりも本日ご列席いただいた皆様方のお力添えが必要であります。


どうか、皆様方には、『○雄 ○子の いちばん 身近な 応援団』として、温かい励ましのお言葉や、時には厳しいご指導を賜りますよう、親ばかではありますが、切にお願い申し上げる次第であります。


(やれやれ…あとはいつものパターン)


意は尽くせませんが、皆様方のご厚情に改めて感謝申し上げますとともに、皆様方の今後ますますのご健勝、ご多幸をお祈り申しあげまして、お礼のごあいさつとさせていただきます。


本日はまことにありがとうございました。


…たぶんこんなことを言ったはずである。


特に、出だしの部分でtobinikoさんのボケの話が口に出てしまったので、まともなあいさつがちゃんと出てくるかどうか…自分でしゃべっていながら、心臓がバクバクした。


とにかく言いたかったのは、

・親は未熟なまま子供を育てている。
・そのためには自分たちで努力しなければいけないが、やはり周りの人の援助なしには進めないこと。
・その意味で、今日あつまっていただいた皆さんには、「二人にとっていちばん身近な応援団」としてご指導をお願いする。
…であった。


これをうまく流れの中で言えるかどうかが問題だった。

息子からは、「本日はありがとうございました」でいいからと聞かされていたが、こうして思い出してみると、長々としゃべりすぎたのかもしれない。


ボケはかませられなかったが、前段の部分で少し失笑をかったので、いちおうtobinokoさんのリクエストには応えられたかな?と思う。


客を送っているときに、息子が職場の上司から、

「これじゃ~まだまだ親父さんを越えられないな」

と言われていた。

…それにしても、親兄弟、親戚、そして二人の上司、友人がそろっている中での締めのあいさつは、これほどプレッシャーがかかるとは予想だにしなかった。

披露宴の最中、鬼嫁に、

「どうもあいさつがまとまらん…やばそう」

と呟いたら、冷たい顔のまま、

「何かパソコンで打っていたじゃない。紙を持ってきたんでしょ。それを読めばいいじゃん」

…と、他人事のように言われた。


紙に書いてあることをそのまま覚えるのはホントに難しい。
むしろ丸暗記はしないほうがいい。


完全に覚えようとして頭が混乱してくる。
文字として覚えるのではなくて、ぼんやりとしたフレーズの塊を順番にしまっておくしかない。

翌日の屋外イベントでのあいさつ文を読み上げる方が苦労した。

やっぱり、ボクは口から出まかせの人生を歩むのだろう。<完>

(追記)
よい子のおとうさんは、『みなさんは この二人の いちばん 身近な 応援団』のフレーズだけは絶対にマネしないでくださいね。

何せ、これを使わんがために私は苦労したのですから…。

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コメント


やぶやまさんの 心模様・・・ 読み進めながら 可笑しくて笑っちゃいました。
やぶやまさんのような 場馴れされている方でも ドキドキされるのですね。
でも バランス良くまとまった とてもいい挨拶ですね。 
 ジンと胸にきます。
 やぶやまさん、さすがだな~。

 
 

後でよかった、そっくり頂戴します。
著作権料としては、心からのお祝いと、肩の荷をすっかり下ろしてくれた数々のフレーズに独創的な大歩危で締めますのでお礼のほどもありません。・・・・でよいでしょうか?

▼ぴっけさん&tobinokoさん
今宵のブログを推敲するのに、最後の力を使い果たしました。
おやすみなさい。

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